「基礎から知る サプライチェーン戦略の羅針盤」 10月29日号 物流効率化法とは何か?

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物流効率化法とは何か?
運ぶ側と荷主、別々だった法の網が重なるまでを、誕生の経緯からわかりやすく解説

物流効率化法は、もともと荷主に何かを求める法律ではなかった。そう聞いて、意外に思われるでしょうか。今月号の時流編では、特定荷主に義務付けられた中長期計画の提出と、書き方に迷う現場の声を取り上げました。そこでは触れなかった問いが、一つ残っています。この法律はそもそも、誰のために、何を目的につくられたのか。2005年の誕生から2024年の大改正までの歩みをたどりながら、その答えを探ります。

Chapter01

物流効率化法とは、どんな法律なのか?

この法律は、2005年の制定時は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」という名前でした。25年4月に、「物資の流通の効率化に関する法律」へ改められ、略称は物流効率化法です。所管は、国土交通省、経済産業省、農林水産省の3つの省です。

この法律には、2つの顔があります。1つは、複数の事業者が連携して物流を効率化する計画を国が認定し、許可や税制で後押しする「支援の法律」としての顔です。もう1つは、荷主や物流事業者に効率化の取り組みを求め、一定規模以上の事業者には計画の提出を義務付ける「規制の法律」としての顔です。時流編で取り上げた中長期計画は、後者にあたります。

節目は3つあります。2005年の制定、16年の改正、24年の改正です。この順に追っていきますが、その前に、名前の紛らわしい法律を整理しておきます。1990年に施行された「物流二法」は、貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法(現在の貨物利用運送事業法)を指します。24年の改正は、物流効率化法と貨物自動車運送事業法を一括して改めたもので、国は「物流改正法」と呼んでいます。同じ「物流」の名がつく別の話ですので、混同しないようにしてください。

Chapter02

運ぶ側の法律は、どう積み上がってきたのか?

運ぶ側の法律は、業態ごとに積み上がってきました。港湾運送には1951年の港湾運送事業法、倉庫には1956年の倉庫業法があります。トラックは、かつては道路運送法の中で規律されていました。それが独立して貨物自動車運送事業法になったのが、1990年12月に施行された物流二法です。

物流二法は、規制を緩める法律でした。参入のハードルは、国の免許から許可へと下がり、運賃も、国の認可を受ける形から、届け出れば足りる形に変わりました。新規参入が相次ぎました。その後の運賃の下落と事業者の疲弊は、9月号の基礎編で扱いましたので、あわせてお読みください。

運ぶ側の法律の主役は、あくまで事業者でした。誰が参入できるのか、どう安全を守るのか、運賃をどう届け出るのか。私の目には、荷主は長いあいだ、その規律の外側に立つ存在に映っていました。

その外側にも、手は少しずつ伸びてきました。運送事業者の違反の原因が荷主の指示などにあるとき、国が荷主に再発防止を勧告する荷主勧告は、遅くとも2008年には運用されていました。18年12月に成立した貨物自動車運送事業法の改正は、この荷主対策を深めました。いまのトラック法は、運送事業者に法令違反を招く行為(違反原因行為)の疑いが荷主にあれば、国が是正を指導できる仕組みを備えています。

20年4月には、運送事業者が運賃を交渉するときの物差しとして標準的運賃が示され、荷主にも理解を求める動きが続きました。それでも、あくまで運ぶ側の法律の中に、荷主への働きかけが置かれた形でした。荷主に物流の効率化そのものを求める法律ではありませんでした。

Chapter03

荷主の側には、どんな法律があったのか?

荷主を対象にした法律として、まず挙がるのは省エネ法です。2005年8月の改正で、運輸の分野にも省エネの網が広がり、荷主もその対象に入りました。施行は2006年4月で、背景には京都議定書の発効がありました。貨物の輸送量が年間3000万トンキロ以上の荷主は、省エネ法上の特定荷主として国の指定を受け、省エネの計画を立てて、毎年の状況を報告する義務を負いました。

計画を出し、毎年報告する。この形は、いまの物流効率化法とよく似ています。違いは目的です。省エネ法の荷主規制は、あくまでエネルギーの使用の合理化が目的でした(現在は、非化石エネルギーへの転換も含む法律になっています)。ドライバー不足への対応を目的に、荷主へ計画を求める法律は、私が確認した範囲では、まだ登場していません。

運ぶ側には業態ごとの法律があり、荷主には省エネという別の目的の法律があった。同じ荷物を扱いながら、両者は別々の網の中にいたことになります。

Chapter04

2005年と2016年、物流効率化法は何を担ったのか?

その省エネ法の改正と同じ2005年に生まれたのが、物流効率化法です。7月に公布され、10月に施行されました。制定の目的は、日本の産業の国際競争力を高めること、多様になる消費者のニーズに応えること、物流が環境に与える負荷を減らすことの3つでした。

仕組みは、こうです。輸送、保管、荷さばき、流通加工を一体で行う事業の計画を、事業者がつくって国に申請します。認定を受けた事業者は、複数の許可の手続きをまとめて進められ、施設の税負担も軽くなる場合があります。中核に置かれたのは、トラックターミナル、卸売市場、倉庫、上屋といった物流施設です。手を挙げた事業者を、国が後押しする法律でした。荷主に義務を課すものではありませんでした。

それから10年あまり。16年10月には改正法が施行されました。改正後は、単独の事業者では対象にならず、複数の者が組んで取り組むことが条件になりました。一方、特定の施設を新設しなくても、認定を受けられるようになりました。背景には、働き手が減るなかで、小口の荷物を頻繁に運ぶ流れが強まっていたことがあります。施設を核にした一体化から、事業者同士の連携を核にした省力化へ、重心が移りました。

実績もあります。21年4月から25年12月末までの、この法律に基づく取り組みの認定は、約377件でした。支援の法律は、現場の連携を地道に後押ししてきたと言えそうです。

Chapter05

なぜ24年に、荷主と運ぶ側を同じ網にかけたのか?

転機は「2024年問題」でした。ドライバーの時間外労働に上限規制がかかる24年4月を前に、国は22年9月に検討会を設け、23年6月に政策パッケージとガイドラインを示し、10月には緊急パッケージを決めました。

24年2月には、政府の中長期計画がまとまりました。ガイドラインを受けて、大手の事業者や業界団体は、それぞれ自主行動計画をまとめ、改善に着手しました。そのうえで、24年4月に成立し、5月に公布されたのが、物流改正法です。努力義務は25年4月、特定事業者への義務は26年4月と、2段階で施行されました。

物流改正法は、3つの柱でできています。1つ目は、荷主と物流事業者に努力義務や計画の提出を課す部分です。2つ目は、トラック事業者の取引のルールを見直す部分で、運送の契約を結ぶときは書面を交わし、元請けは、仕事が誰に再委託されたかを、実運送体制管理簿に残す決まりになりました。3つ目は、軽トラック事業者の安全対策を強める部分です。

物流効率化法の部分に目を向けると、努力義務が及ぶ範囲は広く、荷主やフランチャイズチェーンの本部に加え、トラック、倉庫、鉄道、港湾運送、航空運送の事業者も含まれます。このうち一定規模以上の事業者は、荷主、本部、トラック、倉庫の4区分で特定事業者に指定されます。荷主は年間9万トン以上、トラックは保有150台以上、倉庫は保管量70万トン以上が基準で、いずれも中長期計画を提出する義務があります。運ぶ側と荷主が、同じ法律の中で、同じ種類の計画を出す。20年前には想像しにくかった姿だと、私は感じています。

荷主に求める内容も変わりました。判断基準は、荷主に、開発から調達、生産、販売、在庫管理まで、社内の各部門が足並みをそろえることも求めています。物流部門だけで完結する話ではなくなりました。

Chapter06

30年で何が変わったのか?

振り返ると、物流の法律は長く、2つの流れに分かれていました。運ぶ側には、トラックや倉庫、港湾運送といった業態ごとの法律がありました。荷主には、省エネ法のように、別の目的で網をかける法律がありました。同じ荷物を扱いながら、それぞれが別の網の中にいました。

それが24年の改正で、2つが物流効率化法の中で同じ土俵に乗りました。荷主も物流事業者も、荷待ちや積載の改善に取り組む努力義務を負い、荷主にも、トラックや倉庫の大手にも、中長期計画の提出が義務付けられます。

私が物流記者になって、およそ30年になります。この間に、物流はロジスティクスやサプライチェーンという言葉の中でも語られるようになりました。倉庫やトラックの現場の話が、調達、生産、販売、在庫を貫く経営の話へと広がってきた。その流れが、いま法律の形をとったのだと受け止めています。

冒頭の問いに戻ります。物流効率化法は、もともと荷主に何かを求める法律ではありませんでした。それが、荷主が支援を受ける側から、責任を負う側に立つ法律になった。そのとき物流はどう変わるのか。答えは、これから現場が出していくことになるのでしょう。

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著者プロフィール

刈屋大輔(かりや・だいすけ)
ジャーナリスト/青山ロジスティクス総合研究所代表。専門紙「輸送経済」記者、「月刊ロジスティクス・ビジネス」副編集長などを経て現職。著書に『知識ゼロからわかる物流の基本』『ルポ トラックドライバー』など。「LOGISTICS TODAY」編集委員を兼務。物流・ロジスティクス分野の最新トレンドをわかりやすく解説するnoteマガジン「物流ニュースなび」を無料配信中。 

https://note.com/clever_spirea107

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