業界全体の課題をアイデアや改善施策で乗り越える!現代のスーパーマーケット物流のリアルに迫る

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今回の現場:SBSロジコム 佐倉物流センター支店があるカスミ佐倉流通センター

茨城県を中心に千葉県や埼玉県などに展開するスーパーマーケットチェーン、カスミ。食料品や日用品、衣料品などを幅広く揃え、地域の人々の暮らしを支えています。

全部で196あるカスミの店舗のなかで、茨城県利根川沿いの一部と千葉県、東京都にある47店舗の物流を担っているのが、佐倉物流センター支店です。ここでは、SBSロジコムが物流管理から店舗配送、構内業務、そして取引先との交渉やクレーム対応まで(!)、トータルで手掛けているんだとか。

今回は、前回に引き続いて支店長の大槻さんに、佐倉物流センター支店でカスミの物流全般に取り組むことになった経緯から物流センターを運営するなかで感じる課題とその解決策、今後の展望などを聞きました。

最前線にいるからこそ見えてくる、スーパーマーケット物流のリアルに迫ります!

1.古くからカスミの物流の一端を担ってきたSBSロジコム

カスミとSBSロジコム(前身の相鉄運輸から)は、40年以上の関わりがあります。古くはカスミが急拡大していくなかで店舗配送車輌が足らなくなり、SBSロジコムが相談を受け、1台のトラックから配送を請け負うようになりました。

その後、カスミの成長に伴い、SBSロジコムの配送するトラックが増加カスミの配送を専門に行う拠点としてSBSロジコムの土浦支店が開設し、信頼関係を深めていきました。さらに、カスミが運営する物流センターの構内業務も、徐々に任されるようになっていったそうです。

「地域に根付いた運送会社さんは活動範囲が限られていることが多く、千葉や茨城、埼玉、東京など広域に展開するカスミ様の配送車輌を増やすのは難しかったようですね。その点、SBSグループには各地に支店があり、臨機応変に対応できたことで、カスミ様に『SBSに頼めば何とかなる』と思っていただけるようになったんだと思います」

そんななかで、カスミでは“千葉・東京地域の店舗配送を管轄する物流センターを佐倉市に建設する”ということが決まります。配送業務や構内業務を担当する物流会社のコンペが開催され、SBSロジコムも提案を行いました。

「コンペには大手の3PL会社など複数社参加していましたが、SBSロジコムは、カスミ様との信頼関係を構築していたこともあり、『SBSロジコムに任せれば安心だろう』と、佐倉流通センターの運営を行うことになったんです」

※3PL:3rd Party Logistics。物流の専門的なノウハウをもつ企業に委託する物流の形態。荷主側の物流を全面的に代行する。

2.物流業界全体の深刻な課題である、ドライバー不足

古くからカスミの物流に携わってきたSBSロジコムにとって、物流センターの運営という面では大きな問題はなく、円滑に対応しています。しかし、前回の記事でも少し紹介したように、頭を悩ませているのが「ドライバー不足」です。

「ここ数年で、ドライバーさんの集まりは極端に悪くなりました。『たくさん稼ぎたい!』と考えるドライバーさんは少なくないのですが、SBSロジコムは上場していることもあり、時間外労働の上限規則などのルールをきちんと守り、そうなると、賃金の面では限りがあります。物流会社のなかには、法令遵守という面がグレーなところもあるようなので、ドライバーさんがそちらに流れてしまうという部分もあるようですね」

カスミ佐倉流通センターには8社ほど協力してくれる運送会社がいますが、ドライバーが足らずに臨時対応を依頼しても、そこに十分な車輌が集まらないことも少なくありません。今のところ、派遣のドライバーを雇用するなどして、何とか必要車輌数を確保している状況です。

「少子高齢化の影響もあり、ドライバーさんが増えることは考えにくいので、物流業界の人手不足は本当に深刻です。今後は、“限られた車輌台数で、今ある物量をどう運びきるか”がテーマになると思っています」

3.新時代の物流に対応する、佐倉物流センターの課題解決

ドライバー不足という大きな課題を受け、SBSロジコムでは、カスミの経営層とも協議をしながら、“店舗ファースト”から“物流ファースト”へと変わる大きな変革を進めています。

「これまで物流は、各店舗が指定する『到着時間・品物・量・積み方』などの条件に合わせて動いていましたが、ドライバーが減少し、それを完璧に実現するのが難しくなりました。そこで、カスミ様とも相談して、店舗側としてはとにかく品物がないと商売になりませんから、到着時間が多少遅れたり、カテゴリーの異なる商品を台車に入れる“合積み”になったとしても、安定して『物量を運ぶ』ことに重きを置いています。確実に物を届けることこそ、私たちの最大の貢献ですから、物流が主体となって考え、課題に対応しています」

こうしたなかで、佐倉物流センター支店で取り組んでいるのが、車輌に荷物を満積する “積載重視の配送”。従来は到着時間が細かく決まっていたため、荷室に空きがあっても、時間で区切って車輌が出発していましたが、これを荷室が一杯になった時点で出発する方式にシフトしているのです。

これにより限られたトラックの台数で効率的に配送することができるようになりましたが、店舗にとってみれば、商品の到着時間が不規則になるというデメリットがあります。また、異なるカテゴリーの商品が台車に合積みされているため、複数の売り場で台車を回すなどの手間も増えますが、カスミ側も物流の現場を深く理解しており、お互いに協力しているそうです。

さらに、佐倉物流センター支店では、食品を約0~5℃の温度帯で管理するチルド物流においても、“納品時間の変更”という施策に取り組んでいます。

「これまでのチルド物流は、夜間にメーカーから商品を物流センターに運び、夜間に物流センターで仕分け、開店までに店舗へ届けるという流れが一般的だったんです。しかし、ただでさえドライバーさんが不足しているなか、夜はさらに人が集まりにくい。そこで、『チルド商品の一部でも日中に納品してくれませんか?』と、カスミ様と一緒にメーカーさんへ提案したんです。とても大きな変化なので、難しいというメーカーさんが多かったのですが、賛同してくれるメーカーさんが見つかり、牛乳や納豆などの商品を一部、日中に納品することにしました。2024年の10月頃から日中納品をはじめましたが、現在では定着し、今ではほかのメーカーさんから日中納品にできないか、と相談を受けることもあります」

4.スーパーマーケット業界の変化に臨機応変に対応していく未来

2024年問題などの影響で物流業界全体が大きく変化をしているなかで、さまざまな施策や改善活動を行い、課題に対応してきた佐倉物流センター支店。「我々は物流の専門家なので当たり前ですよ」と大槻さんは笑いますが、カスミ内部の発表会でプレゼンをした佐倉物流センター支店の“改善と成果”は、カスミ側に高く評価され、その後、全日本物流改善事例大会で優秀賞を取ったこともあるそうです。

「カスミ様は、『災害時などでも休まずに、何としてもお客様に必要なものを提供したい』という強い意志があり、大雨で店舗が冠水してもお店を開けるんです。私たちも配送するすべての店舗のハザードマップをつくるなどの対策をしており、実際、大きな台風が来たときでもカスミ様に欠品が出ないよう必死に配送しました。こうしたカスミ様の想いには、頑張って応えていきたいと思っています」

現在、スーパーマーケット業界では再編や統合が進んでおり、カスミは、マルエツやマックスバリュ関東、いなげやなどとともにユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)を構成しています。こうした変化は、物流においてもさまざまな影響があると大槻さんは考えているそうです。

「今後、カスミ佐倉流通センターでも、いなげやさんやマルエツさんなどの配送を含めた対応が求められる可能性はあると考えています。ですから、それぞれのお店のオペレーションに合わせ、臨機応変に対応できる仕組みや体制をつくる準備を進めていきます。さらに、それぞれのいい所を合わせることで、よりいいパフォーマンスが発揮できる、“日本一の物流センター”を目指していきたいですね」

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